解雇予告手当を支払えば解雇できるという勘違い

会社が労働者を解雇する場合、30日前に予告をするか、または平均賃金の30日分にあたる解雇予告手当を支払わなければならないという事は最近はわりと知られています。これは労働基準法の規定です。

ところが、この規定を間違って解釈している経営者や会社幹部、人事・総務担当者が実に多いのに驚きます(特に中小企業に多い)。

実際、「給料1ヵ月分支払えば解雇しても問題ないんでしたよね。」と聞かれ唖然とすることがあります。

確かに労働基準法では、解雇の際の解雇予告(or 解雇予告手当)を会社に義務付けていますが、解雇予告をしたからといって解雇が有効だとは一言もいってません。そもそも解雇が有効か無効かという問題は契約上の民事の話であり、労働基準法とは関係がありません。解雇予告をした or 解雇予告手当を支払ったことと、解雇の有効性は別問題なのです。

会社が解雇予告なしで解雇した場合、労基法違反で「6ヵ月以下の懲役 or 30万円以下の罰金」の罰則が定められています。現実には労働基準監督署に申し出れば、会社に対して指導くらいはしてくれると思います。しかし、解雇の有効・無効は別ということです。

ちなみに解雇の有効性を考えるうえで最も重要なのは解雇の理由です。この理由が正当か不当かについては労基署は判断しませんし、対応もしてくれません。

日本においては解雇は厳しく制限されており、よほどの理由がなければ認められないのですが、実際には裁判になればまず認められないだろうと思われる理由での解雇は横行しています。これは労働者が泣き寝入りするだろうという会社の確信犯的な考えもあると思いますが、一方で会社が解雇について正しい知識を持っていない(つまり解雇予告があれば会社の裁量で自由に解雇できると思っている)ことも起因していると思います。

労働者側においても、まず本来解雇には相当にハードルの高い理由が求められるのだという事を認識しておくことが重要です。



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