次回は契約更新しないと言われたときの対応

有期労働契約は期間満了で契約関係が終了するのが原則です。

しかし、契約関係の実態によっては解雇と同様に解雇権濫用法理が類推適用され、雇止めが無効になることもあります(※ちなみに無効とされた場合は、従前の契約が更新された場合と同様の効果が生じるとされています)。

そこで雇止めについてのリスク回避を考えている会社は、当該契約期間中(or 終了時)に更新拒否を通告してくるのではなく、ワンクッション置いて直前の契約更新時に

「契約更新は今回で最後とし、次は更新しない。」

という文言を契約書に入れてくることがあります。


これは契約更新の際に「次回の更新はない」ということについて合意があれば、労働者に更新の期待が生じることもなく、解雇権濫用法理は適用されないからです。これによって会社は問題なく有効に雇止めを行えることになります。

この場合、雇止めの理由について会社に証明書の交付を求めたとしても、

「前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため」

という理由の記載で済んでしまうのです。

これからも働きたい労働者としては悩むところです。次回の更新がないことについて了承はしたくないし、かといって契約書に署名をしなければ今回の更新自体が行われないことになってしまいます。

ここで重要なことは、次回更新しないということについてお互いの合意が必要であるという点です。

ですから労働者側において納得できないということであれば、その旨を会社にはっきり伝え、契約書から次回不更新の文言をはずしてもらうよう申し出ることが必要です。契約書を変えることはできないと会社が言うのであれば、次回不更新に関して合意しない旨を記入したうえで署名・押印をするのがよいでしょう。

仮にこれらの労働者の行為をもって会社が契約更新拒否を持ち出してくれば明らかに不当な雇止めといえます。すぐに雇止め理由証明書の交付を求めるところでしょう。会社が応じない場合は労働基準監督署に申告することにより行政指導の対象となります。まさか雇止めの理由を「次回不更新に合意しなかった為」とは書けません。最終的に会社が提示する理由が妥当であるのか、また、前回の記事で書いたように契約の実態がどうであったのかに基づいて解雇権濫用法理が類推されるかどうか判断されることになります。

どうしても会社に対して不更新合意の拒否ができず、署名・押印してしまった場合であっても、民法の詐欺・強迫・錯誤などを根拠に後で合意の有効性について争える可能性もありますが、できる限り証拠に残る形の意思表示がよいと思います。



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