想像以上に高い試用期間中の解雇のハードル

入社後の数ヵ月間を試用期間として設定する会社が多いですが、試用期間中であれば労働者を会社の裁量でいつでも比較的自由に辞めさせることができると考えている経営者は少なくありません。

「まだ本採用ではないから、雇用契約は成立していない。」

「本採用拒否は解雇にはあたらない」

と考えているケースさえあります。

当然ですが、本採用前かどうかに関わらず雇用契約は成立していますし、試用期間中に会社の一方的な意思で労働者を辞めさせたり、試用期間終了後に本採用を拒否するのは法律上解雇にあたりますので、簡単に辞めさせることはできません。


試用期間は法律上、「解約権留保付き労働契約」といわれます。試用期間は社員の適格性を調査・判断する為の期間であり、適性の判断の最終決定のために解約権を留保している訳ですが、留保解約権の行使(本採用拒否・試用期間中の解雇)は通常の解雇に比べ広い範囲の解雇権が認められる(つまり解雇しやすい)といわれています。

しかしながら、留保解約権の行使には通常の解雇の考え方と同様、それなりの理由(客観的に合理的な理由)が求められます。

ですから

「想像してたよりも能力が低い。」
「何かいまひとつパッとしない」
「性格・雰囲気が社風に合わない」

などのハッキリしない理由で本採用拒否が認められないのはいうまでもありません。

そして、少なくとも最近の裁判例の流れは、試用期間中の留保解約権の行使が、前述した「通常の解雇よりも広範に認められる」という結果にはなっていません。

これらを考慮すると、現実的には、企業が試用期間を使って不適格と判定した労働者の本採用を拒否する行為は、実質的に通常の解雇と変わらないほどに極めてハードルが高く、明らかに悪質・違法・責任の重いと思われる行為でもない限り、ほぼ認めらることはないであろうと考えられます。


なお、念のためですが、「入社14日以内であれば簡単に解雇できる」と勘違いしている方をたまに見かけますが、正確には「入社後14日以内であれば解雇予告はいらない」ということであり、入社1日目であろうが解雇には相応の理由が求められます。



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