「年俸制だから残業代はでない」は通用しない

年俸制の社員は賃金が年額で決まっているから残業代の支給対象にはならないと説明する会社の話はよく聞きますが、これは大きな間違いです。

労働基準法は、働いた時間に応じて賃金を支払えといっています。これは、時給だろうが、日給だろうが、月給だろうが、そしてもちろん年俸だろうが変わりません。時間外労働が発生すれば、年俸額から1時間当たりの時給単価を計算して残業代を支給しなければなりません。

では年俸制というのは一体何なのかといえば、あくまでも所定賃金の決定を年額で行っているというだけのものです。


労基法において、残業代を支給しなくてもよいとされる場面は、基本的に2パターンしかありません。

1.労基法第41条に規定されている労働者(管理監督者など)
2.みなし労働時間制(事業場外みなし、裁量労働制)の適用対象者

この2つに該当しない場合、例え年俸制を採用していても残業代が支払われなければなりません。

ちなみに管理監督者は、社内的に管理職であるかどうかではなく、法的に管理監督者の要件を実質満たしているかが問われます。また、みなし労働時間制にしても、ただ会社が導入しているつもりというのは通用せず、就業規則によって制度が労働者に周知され、法令上の要件をクリアしていなければ有効とはなりません。


また、年俸制において、賞与の額が予め確定している場合、例えば、

「年俸額を16で割り、毎月16分の1ずつを賃金として、夏冬にそれぞれ16分の2ずつを賞与として支給する。」

というような場合は、残業代の計算基礎に月例給与だけでなく賞与を12等分した額を加えることとされており、残業代の単価は高くなります。


なお、通常の月給制の場合と同様に、年俸額の中に残業代に相当する固定残業代、みなし残業代が含まれているとされる場合があります。この場合、就業規則(賃金規程)および雇用契約書にて、「何時間分の時間外労働としていくら設定されているのか」を明確にした上で周知されていなければなりません。そして実際の残業代が定額残業代を上回った場合は、超過分が毎月きちんと支払われていなければ違法になります。


以上、年俸制は残業代を支給しない根拠となりえないことにご注意ください。



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