労働問題を弁護士に相談するという選択肢

事実、労働問題で悩む労働者にとって弁護士ほど頼りになる存在はいないと思います。労基署とは違い労働者側の立場で相談にのってくれますし、会社との交渉ごとから訴訟まで一切を本人に代わってやってくれます。労働者を支援できる専門家は司法書士社会保険労務士などいますが、全てを最後までサポートできるのは弁護士だけです。弁護士に依頼できる状況ならば実際それに越したことはありません。


しかし現実には弁護士に依頼するのが難しい場面が少なくありません。

第一に、費用が高額であることから敷居が高く、相談に行くことすら躊躇される方が多いと思われます。

実際どれくらいの費用なのか、あくまでも私の知る範囲としてですが。

弁護士の報酬は着手金と成功報酬に分かれていることは有名ですが、労働事件の場合には通常着手金が20〜30万円程度かかると思われます。10万円程度の安い料金設定であったり、なかには残業代請求などの事案(つまり実入りが手堅い事案)に限って着手金無料という法律事務所もあります。着手金が安い場合には成功報酬を高くしてバランスをとっているケースが多いようです。実際に紛争が解決した場合には、成功報酬として経済的利益の大体15〜30%程度を支払うことになります。もちろんこれ以外の報酬体系の法律事務所もあるはずです。

これらの弁護士報酬を考慮した場合、職を失っているかまさに失いそうな不安定な状況にある労働者や、あるいは賃金や残業代が支払われず生活も楽でなく、さらに手元の資金にもあまり余裕がないという労働者であれば、相談することさえ二の足を踏んでしまうことも理解できます。請求できる見込みさえわからない状況であればなおさらです。


また、高額な費用をあらかじめ認識したうえで仮に相談に行ったとしても、必ずしも弁護士が依頼を受けるとは限りません。

なぜなら、まず会社に未払い賃金や慰謝料、和解金等を請求し支払いが受けられた場合には、訴訟費用や弁護士報酬を除いた額が最終的に労働者の手元に残るのであり、ある程度の金額を請求できる事案でなければそもそも労働者にメリットがないからです。

また、勝訴や和解の見込みが薄く、弁護士の気が進まないケースも考えられます。

これらの可能性を十分認識したうえで相談にいくのがよいと思います。弁護士に相談をすれば案件の見通しをたててもらえるので、そこで難易度や報酬等を考慮したうえで依頼するかどうか決めるのもいいと思います。相談料は一般的に30分5,000円が相場ですが、やはり残業代などの一定の事案に限って無料で相談に応じる法律事務所も見うけられます。



さて、弁護士に相談する上でもう1つ注意すべき点は、弁護士が労働法、労働問題に精通しているかどうかということです。

弁護士は法律の専門家であり、法律に精通していることはもちろんいうまでもないのですが、労働法はどちらかというと特殊な領域であり、普段はあまり労働事件を扱わないという弁護士も少なくありません。

一方で、労働法専門の弁護士もいるのですが(※会社側専門もいるので注意)、全体から見ればわずか少数であり、大半の弁護士は交通事故や借金・債権回収・離婚・相続など民事関係の紛争を幅広く取り扱う中で労働事件も相談があれば受けるというスタンスだと思います。かなり個人差があると考えた方がよいと思います。

また、労働事件には企業の人事管理や労務管理に関する事項が少なからず関係してきますが、これらは法律うんぬん以前に専門的な分野であり(つまり経営管理的に)、労働法を理解しているからといって適切な対応がとれるとは限りません。この点について、例えば過去に会社員を相当年数経験している弁護士であれば会社組織に関する前提知識をもっている分だけ様々な事情を理解できますし、さらに元人事部員だという弁護士の場合には(※滅多にいないと思いますが)人事労務管理に精通し専門的な事情を読み取ったうえでの適切な対応が可能だと思います。



労基法違反であれば、まずは労働基準監督署へ法違反の申告に行くべきですが、労基署では解決できなかったり、あまりきちんとした対応をしてくれない場合で、請求できる金額が大きいケース、複雑な事例、または白黒をはっきりつけたいという場合は、弁護士に一度相談してみる価値はあると思います。



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