「1ヵ月単位の変形労働時間制」なのに勤務シフトを定めない違法な運用

サービス・飲食・小売などの仕事はシフトが組まれて各日の労働時間や休日が不規則であることが一般的です。

本来、1日8時間・週40時間を超えると時間外労働という扱いになりますが、会社は「1ヵ月単位の変形労働時間制」を運用することによって、1ヵ月の枠内で柔軟に勤務パターンを組み合わせることによって時間外労働を減らし、結果的に残業代を削減することができます。


しかし、私が相談を受けた労働者のシフト表を見せてもらうと、なんと勤務日が特定されているだけで、始業時刻も終業時刻も一切書いていないことがザラにあります。
(※ちなみに休日の記載もなく、全てが勤務日という、もはやシフト表の体をなしていないケースも現実にあります。)

これでは各日の所定労働時間も1ヵ月の総労働時間もわかりません。まさかこんなずさんな労務管理で問題ないと考えている会社がこんなにもあるのかと唖然とします。


1ヵ月単位の変形労働時間制は起算日と対象期間、勤務ダイヤ、勤務パターンと運用方法を就業規則に定め、さらにシフト制の職場ではシフト表によって各日の始業・終業時刻と休憩時間、休日をあらかじめ明らかにすることによって初めて有効な制度といえます。

したがって、いくら「うちは1ヵ月変形制だ」と社長が主張しようが、シフト表に始業時刻も終業時刻も載っていないのでは労働基準法違反でまるっきり無効なのであり、原則通り1日8時間・週40時間できっちり計算した差額の残業代を請求することができるわけです。


シフト制の職場で働く方は、雇用契約書と就業規則そしてシフト表を確認し、1ヵ月変形制の要件を満たしているか確かめるべきだと思います。



労働者からの相談は「労働トラブル相談所」まで