就業規則を社外へ持ち出し、第三者へ閲覧させる行為への罰則

私は普段、労働者の方から相談を受ける際、労働トラブルに関係する書類等をできる限り持ってきてもらうようにしています。

雇用契約書、給与明細書、タイムカード・出勤簿等のコピー、離職票、シフト表、解雇通知書、診断書、源泉徴収票、求人票など色々ありますが、やはり参考になるのが就業規則や賃金規程などです。

しかしながら、就業規則をお持ち頂いた方から質問を受けることがあります。

就業規則のような社内文書を社外に持ち出して、相談の為とはいえ第三者に閲覧させることに問題はないのか。」ということです。



まず、結論からいうと、確かに問題ゼロとはいえません。

企業が自社の就業規則を社外秘扱いとして、社外への持ち出し禁止、あるいは社外の第三者への開示を禁止としたり、それらに違反した場合の懲戒処分を定めることも全て企業の自由であり、そのような環境下では正当な理由もなく無闇に他人に見せるのは差し控えるべきなのは当然です。

ですが、深刻な労働トラブルに直面し、その解決の為の行動の一環として就業規則を専門家に見せる必要性があるのであれば、社外秘であることにとらわれず持ち出してしまったほうがよいと私は考えます。


まず第一に、社会保険労務士や弁護士などの士業の専門家には守秘義務があり、相談の段階で情報が外部に出ることはまずありません。

第二に、企業が禁止行為や罰則を定めることと、それらが法的に有効と判断されるかどうかは別問題だということです。労働契約法では、企業の懲戒権について濫用法理が定められており、懲戒処分が「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効となるのです。さらに解雇処分の場合には、解雇濫用法理の厳しい制限を受けることになります。

例えば、労働者が企業とトラブルになり、専門家に就業規則を見せて相談した後に企業との交渉をはかり、企業は就業規則を外部に開示した事を知った段階で懲戒解雇の通知をしてくることもないとは言い切れません。しかし、その状況において就業規則を専門家に閲覧させるのはやむを得ない必要不可欠な行為であって不当とはいえず、したがって解雇をするのは酷であるし合理的な理由とはいえないという考え方も成り立つのです。

労働トラブルに立ち向かうには、そういった面も総合的に含めて交渉を行い解決を目指す意識が必要なのは確かです。しかし、現に労働問題で悩んで然るべき相手に相談しようと決心している局面においては何よりもその問題の解決が重要であり、就業規則社外秘の件にそこまでとらわれる必要はないと私は考えます。


どうしても安全策で行きたいという場合には、コピーをとるか、コピーも禁止されている場合には必要部分だけでも手書きで写して持ち出す、あるいは口頭で読み上げて録音するという方法も考えられます。会社の規定の仕方や解釈にもよりますし、それらが確実に持ち出し禁止規定に抵触しないと断定できるものではありませんが。



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