<退職強要>噂の業績改善プログラム「PIP」

外資系の某IT企業がよく使うといわれる退職強要の手法に「業績改善プログラム(通称:PIP)」というものがあります。(※正確には「Performance Improvement Program」)

一般的に外資系企業はクビ切りが多いといわれますが、本国ならともかく日本の解雇規制の中ではそう簡単にクビは切れません。某外資系企業は毎年勤務成績が下位の労働者を一定数リストラすることによって新陳代謝をはかり、全体の質を確保しながら競争力を維持していく方針のようで、そのためにPIPが欠かせないようです。

表向きは成績の振るわない社員に対して目標を与え、達成状況について面談を重ねながら指導を行い、業績改善を図っていくというものですが、実態は会社が辞めさせたい社員に対し、合法的な退職勧奨の域を越えるプレッシャーを与え続け、強引に自主退職の方向にもっていくというものです。

まずターゲットとなる労働者を呼び出して退職勧奨を行い、応じない場合にPIPが始まります。改善指導とは程遠い達成不可能なノルマを与え、未達成の際には強く責めたてて強く退職を促してきます。万一達成した場合であっても次々と困難な目標が与え続けられます。それでも退職に応じない場合は不当な降格・配転が行われます。

おそらくいったんターゲットになった場合、PIPに終わりはありません。あくまで退職勧奨に応じない労働者に対しては、会社は最終的に解雇を行うスタンスであると考えられます。能力不足による解雇を行うには、会社は指導・教育を十分に行ったかという解雇回避努力の要件を満たす必要がありますが、PIPはこの解雇回避措置の事実を作り上げることを狙っている側面があると思われます。

しかしながら、たとえ指導・教育を繰り返し行ったことを立証できたとしても、会社が能力不足を理由として労働者を解雇することは容易ではありません。能力が平均より著しく劣っていること、どんなに指導・教育をしても向上の余地がないことが必要になります。下位の一定数を毎年リストラするにあたって、この条件が満たせるとは到底思えません。能力不足で解雇された場合には争う余地はおおいにあると考えられます。

また、面談の中で会社が戦力外通告を行ったり退職を促してくることは違法ではありませんが、度を超えて執拗に退職勧奨を繰り返してきたり、労働者の人格を傷つけるような言葉を口にしたり、解雇をほのめかすなどして脅してきた場合には不当な退職強要行為に該当すると考えられます。PIPが始まったと思われる場合には、ICレコーダーを使って面談の会話を録音した方がよいでしょう。さらにプログラムで使用する目標シートの類は全て写しをとっておき、目標の達成状況やプログラムの過程、退職勧奨の経緯についても自分で細かく記録をとっておくべきです。「ロックアウト型退職勧奨」と同様、争うのであれば退職に応じる前に専門家に相談すべきです。



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