不当な雇止めには解雇権濫用法理が類推される

有期労働契約で更新を繰り返して働いていたところ突然契約更新を拒否される雇止めの問題。

本来、有期労働契約は契約期間が満了したら契約は終了するのが原則であり、会社が適正に運用している限り問題は生じません。何十回更新したって問題ないと思われるケースも実はたくさんあります。

では雇止めが実際に問題だと判断されるのはどんな場合か。

まず第一に、契約の実態が期間の定めのない契約と実質的に異ならないと認められる場合です。

いくら会社が有期契約だと言い張ってもそれは形式的に体裁だけ有期契約にしてるだけであって、期間の定めがない契約と変わりないじゃないかと言えてしまう状態です。この場合、解雇権濫用法理が類推適用されます。つまり、解雇と同様に「合理的な理由」がなければ雇止めは無効ということになります。


次に実質期間の定めのない契約だったとまではいえないケースです。ここで問題となるのは、雇用継続について労働者に保護すべき合理的な期待があったと認められるかどうか、つまり労働者が更新を期待するのは無理もない状態だったかどうかです。

過去の裁判例では、このパターンにおいても解雇権濫用法理を類推すべきであると判断されています。


労働者が会社に対して雇止めが不当であると主張するためには、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態であったか、または雇用継続について合理的な期待があったと認められる必要があり、それら契約関係の実態を判断する際のポイントは簡潔に書くと以下のようになります。

1.業務の内容(恒常性・臨時性、正社員との同一性)
2.契約上の地位(基幹性・臨時性、正社員との同一性)
3.当事者の主観的態様
4.更新の実態(手続きの厳格性、更新回数・通算期間)
5.他の労働者の更新状況

例えば、

・ 正社員と同じ業務をやっていた
・ 「ずっと働いて欲しい」など継続雇用を期待させることを言われていた
・ 契約更新の際は面談などの話し合いはなく、毎回形式的に契約書にサインだけさせられた
・ 今まで更新されなかった有期契約労働者はほとんどいない

などの事柄が重なれば、雇い止めが無効と判断される可能性は高くなると考えられます。この辺りは一刀両断に線引きするのではなく、個々のケースごとに考える必要があります。

厚生労働省はルールをより明確にしてトラブルを防止する為、企業に向けて指針を公表しています。具体的には、雇用契約書に更新の有無および更新の判断基準を明記するよう求めています。まずは契約書にこれらの事項が記載されているか確認すべきですし、書かれていない基準によって更新を判断することは当然不当と考えられます。

なお、前回の記事で会社から解雇を通告された際は解雇理由証明書の交付を求めるよう書きましたが、雇止めを通告された際にも雇止めの理由を記載した証明書の交付が上記指針によって会社に義務付けられていますから忘れずに入手するべきです。



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